写真の町東川賞—2018年国内作家賞

国内作家賞

第34回写真の町東川賞 国内作家賞

潮田登久子 USHIODA Tokuko

東京都在住

受賞理由:「本の景色/BIBLIOTHECAシリーズ」(ウシマオダ/幻戯書房、2016-17年)に関する一連の発表に対して

1940年東京都生まれ。1963年桑沢デザイン研究所写真科卒業。1966年‐1978年、桑沢デザイン研究所および東京造形大学講師を務める。1975年、フリーランスの写真家としての活動を始める。
 1981年より、日々の生活を写真に記録するなかで、不思議な存在感を放っていた冷蔵庫の撮影をはじめる。表には出てこない家庭の多様な暮らしぶりが見て取れる「冷蔵庫」シリーズとして発表。布彫刻としての「帽子」をとらえたシリーズほか、1981年から2001年にかけては、写真家の夫・島尾伸三と中国の庶民の生活のリポートを行い、多くの共著を手がけている。
 1995年からは、本と本の置かれている環境を主題に撮影をはじめる。1996年に解体されたみすず書房の旧社屋と、そこで働く人々を記録したドキュメントフォト『みすず書房旧社屋』(幻戯書房、2016年)、恩師である故・大辻清司の自宅のアトリエを撮影した『先生のアトリエ』(ウシマオダ、2017年)、図書館や個人宅に蔵された、歳月を経た本の圧倒的な佇まいをとらえた『本の景色』(同上)の三部作を「本の景色/BIBLIOTHECAシリーズ」としてまとめる。同シリーズで、2018年土門拳賞、日本写真協会賞作家賞受賞。

作家の言葉

栄誉を授かりましたこと、驚きと感謝の気持ちでいっぱいでございます。
 御礼申し上げます。
 1995年から本と本の置かれている環境を主題にして私は写真撮影を続けたことになります。
 様々な時代に多様な運命を辿ってきた「本」に触っていると、不思議な感慨が湧いてきます。 ヨーロッパのどこかの国の教会の祭壇で、王様のように座っていた、ひとかかえもある聖書が目の前にある不思議。鉄と木と麻縄と羊の皮で作られたそれは、長い歴史の中で、見るも無惨に変わり果てた姿をさらしています。わずかに残る羊の皮の上に印された赤色の四線譜の上で踊る四角い音符からは、はるか昔の人々の祈りが聞こえてくるではありませんか。室町時代なのか、或いは江戸のものなのか、黄ばんだ和紙にかかれた屏風仕立ての経文に、一面星屑のように穿たれた無数の穴は、小さな昆虫のシバンムシが、来る日も来る日も経を唱えるように食んでいた証ではないかと思ったりしています。「本」をオブジェとして写真撮影を試みているうちに、情報の担い手という「本」自体が持っている役割を超えて、新たに「本」そのものの存在が魅力となって浮き立ってきて、興味がつきません。

                                              潮田登久子

  • たくさん過ぎるしおりでブロッコリーのようになった『小学国語辞典』を撮影しました。

    京都の小学校
    2008年

  • 大福帳。未使用。表紙に墨筆で「□山文四郎」。
    □の部分、判読できませんでした。

    大野陽子所蔵
    2012年

  • アンカット製本が積み上げられています。

    早稲田大学図書館特別資料室
    2003年

  • 『TIPPENNY-TUPPENNY's DOLLY BOOK』
    英国、子ども向け豆本。

    早稲田大学図書館
    2004年

  • 金属活字活版印刷所の社長他3人の職工は活字や印刷機の部品のようによく働きます。

    内外文字印刷株式会社(東京板橋)
    2009年

  • 店内は本の海のようで、その底に店主が満足気に沈んでいました。

    古書店アドニス内と店主・宮脇忠彦
    2003年

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