写真の町東川賞—2016年海外作家賞

海外作家賞

第32回写真の町東川賞 海外作家賞

オスカー・ムニョス Oscar Muñoz

コロンビア・カリ在住

受賞理由:展覧会「Protographs」(Jeu de paume、2014年、パリ他)及び一連の作家活動に対して

1951年コロンビア西部カウカ県ポパヤン生まれ。コロンビアを代表する現代美術作家として、国内外で高く評価されている。1970年代にコロンビア第三の都市カリにある美術学校Escuela de Bellas Artesを卒業。学生時代に写真のイメージをもとにしたドローイングの制作をはじめる。写真だけでなく、版画、ドローイング、インスタレーション、ビデオ、彫刻など、表現手段は多岐にわたるが、写真及び映像メディアは常に中心的なテーマとして位置づけられている。
 作品には水や息といった一過性の素材がよく用いられる。これらは、麻薬カルテルやゲリラ抗争による多数の死を日常のものとして受け入れざるをえない、1980年代、90年代のコロンビアでの体験に根差しており、永続することのない時間、記憶への詩的な反省をうながすものとなっている。展覧会「プロトグラフス(Protographs)」は、これまでのシリーズを「プロトグラフ」というテーマのもとにまとめたもので、コロンビア、ブエノスアイレス、パリなどで開催された。「プロトグラフ」は、写真が撮られ、イメージが永遠に固定される直前の瞬間、いわば潜在的な写真とでもいうべきものを指している。
 2006年にはカリに「Lugar a Dudas(疑いの場)」を創設。アーティストのレジデンス・プログラムや、美術、政治を語りあう公共の場、文化センターとして重要な役を担っている。

作家の言葉

「ナルシス」シリーズは、私たちが日々慣れた顔を洗う水のごとく、洗面台を流れ去るセルフ・ポートレイトのビデオ・スティル。セルフ・ポートレイトのイメージは、シルクスクリーンと同じようにまずは写真の転写によるが、通常のシルクスクリーンの手法とは違い、スクリーンは洗面台の水面のやや上に水平にセットされる。そこに粉炭を撒くと、メッシュを粉炭が通る。そしてスクリーンを取り除くと、水面に炭で脆い絵が描かれている。ビデオが捉えるのは、水が流れるにつれ、ゆがみ崩れる水面の画だ。次に現れるのは、洗面台の底の画。水に浮かぶ画を捉えるために使われた光が、浮遊する埃の影を落としている。最後のシーンで粉炭が洗面台の表面に形容しがたい痕跡を残すまで、ポートレイトは様々な変容を遂げる。この一過的なプロセスそのものを作品と定義します。これらセルフ・ポートレイトの一過性と脆さには、すべてが虚栄でしかない「ソロモンの雅歌」*がこだましている。

                                          オスカー・ムニョス

*「ソロモンの雅歌」は、旧約聖書にある男女の恋の歌をまとめた一編。


  • すべてシリーズ「ナルシス」より

    2001-2002年

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