写真の町東川賞—2016年飛彈野数右衛門賞

飛彈野数右衛門賞

第32回写真の町東川賞 飛彈野数右衛門賞

池本喜巳 Yoshimi Ikemoto

鳥取県 鳥取市在住

受賞理由:「近世店屋考」シリーズなど、鳥取を中心とした山陰地方の風物を長年撮影し続けてきた功績に対して

1944年鳥取県鳥取市生まれ。最初の就職先である新聞社で写真と出会う。1967年日本写真専門学校(現日本写真映像専門学校、大阪)を卒業。1970年に郷里の鳥取市に池本喜巳写真事務所を設立。77年より写真家の故・植田正治の助手を20年近く務めながら、山陰の風土をテーマに写真を撮り続ける。1999年鳥取市文化賞受賞。本年4月には、山陰の文化を発信、醸成する場所として、事務所を改装し、「池本喜巳小さな写真美術館」を開館した。
 1970年代から撮影をはじめたシリーズ「そでふれあうも」は、人々の内面に残存する山陰の風土と記憶のスナップショットである。並行して撮影が続けられるシリーズ「近世店屋考」は、1983年に撮影した鳥取市青谷町にある理容室を嚆矢とし、現在にいたるまで、高度経済成長のなか次々と姿を消していった金物屋、履物店、洗濯屋、釣具店、駄菓子屋など、約60業種100軒以上の店を撮り続けている。虎ノ門ポラロイドギャラリー(東京、1986年)での展覧会をはじめ、ニコンサロン(東京、大阪、2015)のほか、海外でも作品が発表された。
 主な写真集に、『そでふれあうも』(G.I.P. Tokyo、1993年)、『池本喜巳作品集 鳥取百景』(鳥取銀行、1999年)、『近世店屋考』(合同印刷株式会社、2006年)『因伯の肖像 未来への記憶』(今井印刷株式会社、2014年)など。

作家の言葉

1978年南仏アルルで開催された国際写真フェスティバルに、私は植田正治のアシスタントとして参加しました。世界から集まった写真家たちと早朝から夜中まで写真にどっぷりつかる夢のような日々でした。
 そんなある日、イタリアの写真家アントニオ・ジョルジョ・ビアバティに連れられ、フランスの写真家、ベルナンド・プロッシュに会いに行きました。彼の人柄に敬服すると同時に、ビィンテージプリントの美しさにも圧倒され、衝撃を受けました。これが私の最大の不幸だったかもしれません。写真とは何かを追究するあまり、見てはいけないものを見てしまったのです。そのために非力な私は、すっかり押しつぶされてしまい、自己の才能に限界を感じ、しばらく写真が撮れませんでした。それが私にとって、「ふるさとを記録する」という内向的記録写真へ走らせる原因となったのだと考えます。
 同郷の先輩である塩谷定好、植田正治の足跡をたどる気持ちもあり、ただひたすら山陰にこだわりレンズを向けてきました。『そでふれあうも』『近世店屋考』『因伯の肖像』『鳥取百景』『三徳山三佛寺』現在もなお進行形です。
                                                                                                  池本喜巳

  • 近世店屋 高木釣具店 

    鳥取県鳥取市瓦町 2007年

  • 近世店屋 黒田商店

    鳥取県鳥取市末広温泉町 1988年

  • 近世店屋 但見酒店

    鳥取県鳥取市弥生町 1999年

  • 近世店屋 日光屋洗濯店

    鳥取県鳥取市気高町宝木 1987年

  • そでふれあうもシリーズ

    島根県松江市八雲町 1979年

  • そでふれあうもシリーズ

    兵庫県三尾港 1974年

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