AWARDS東川賞

新人作家賞

藤岡亜弥
FUJIOKA Aya
広島県在住

受賞理由

展覧会「New Stories ニュー・ストーリーズ」(奈良市写真美術館、2022年)、「ぎこちない会話への対応策—第三波フェミニズムの視点で」(金沢21世紀美術館、2021年)ほか、近年の多様な活動に対して

1972年広島県生まれ。’94年日本大学芸術学部写真学科卒業。

大学卒業後に滞在した台湾での出会いからヨーロッパを旅することになる。2週間の予定が、エストニアからフィンランド、イギリス、フランス、スロバキア、ハンガリーと1年半彷徨う。旅先で出会った人々やそこでの経験を写真にした「さよならを教えて」は、’04年ビジュアルアーツフォトアワードを受賞し、同名の写真集がビジュアルアーツ出版から出される。

帰国し、安定した生活が続くと次第に焦燥感を感じ始め、’07年新進芸術家海外研修制度(文化庁)の研修員としてニューヨークに向かう。研修期間終了後も’12年まで滞在し、そこでの出来事や出会った子どもたちをスナップした作品「Life Studies」、「Home Alone」(Dexon gallery、NY、’10年)を発表。

その前後、帰国した地元広島の実家での日常や、家族との距離感を撮った写真集『私は眠らない』(赤々舎、’09年)を出版する。さらに、広島に暮らすようになると「いやがおうでもヒロシマの表象に出会う」。そこから「日常を通して歴史を意識化」しようとヒロシマと向かい合い、それらは「川はゆく」(ニコンサロン、東京、大阪、’16年)に繋がり、第41回伊奈信男賞を受賞。同名の写真集『川はゆく』(赤々舎、’17年) は、’18年第27回林忠彦賞と第43回木村伊兵衛写真賞をダブル受賞。

主な個展に「さよならを教えて」(ビジュアルアーツギャラリー、東京、大阪他、’05年)、「私は眠らない」(AKAAKA Gallery、東京、’09年)、「Life Studies 2」(Place M、東京、’14年)、「アヤ子形而上学的研究」(ガーデアンガーデン、東京、’17年)、「アヤ子江古田気分」(OGUMAGU、東京、’22年)、「New Stories」入江泰吉記念奈良市写真美術館(奈良、’22年)、主なグループ展に「DOMANI 明日2020」(国立新美術館、’20年)、「日常の光-写し出された広島-」(広島県立美術館、’20年)、「日常とつながる美術の扉」(東広島美術館、’20年)、「ぎこちない会話への対応策―第三波フェミニズムの視点で」(金沢21世紀美術館、’21年)等がある。

 

作家の言葉

プラプラするのが好きで、何かを決定していくのが苦手で、撮った写真をもったいぶって見ずに置いておく癖があります。コロナ禍のここ数年は、放っておいたそれらを今こそ清算しようと、古いネガと格闘しました。そして写真に映るあの頃の自分の無意識を探すことに夢中になりました。

子供や花など、なぜか気になってずっと撮っているものがいくつかあります。そんな自分でもよくわからない執着を集めてみることで、どうして自分が写真を撮るのか、自分は何なのか、不意に分かるかもしれない。そんな思いの中で生まれた「NewStories」や「花のゆくえ」、「城の物語」は、これまで自分が組み立てた物語を解体して、新しい軸で編み直してみる試みでした。

古いネガを見ながら過去を散歩していると、自分がずっと学生の気分のまま写真をやってきてしまったんだと気づき、ため息をついておりました。そんなところに、思いもよらず東川賞新人賞の知らせをいただき、背筋が伸びる思いでした。私の写真はいつも振り返ってばかりで、生産性を疑いますが、見てくれる人がいることで次に進めます。なんといっても、賞をいただいてあの夏の東川に行けると思うと本当にうれしいです。ありがとうございました。

藤岡亜弥

 

Life Studies
2013
かわいいだけじゃだめかしら
my life as a dog
1993
川はゆく
Here Goes River
2016
城の物語
The castle
2014
私は眠らない
I don't sleep
2007
私は眠らない
I don't sleep
2009