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「GAKKOTEN」レビュー結果発表

若い感性で切り取られる“今”を感じる写真を発表する場として、2019年よりスタートした屋外展示「GAKKOTEN~大学・専門学校屋外写真展~」。
今回よりレビュアーによる作品講評の機会を設けることとなり、総合評価とする「組写真」、そして気になる存在としての1枚をそれぞれセレクトしていただきました。学生のみなさんへのエールを込めたコメントとともに作品をご紹介します。

<GAKKOTEN参加校>
日本大学芸術学部写真学科、大阪芸術大学芸術学部写真学科、東京工芸大学芸術学部写真学科、
日本写真芸術専門学校、東京綜合写真専門学校(申請順)

<レビュアー>
石川直樹 (第25回東川賞新人作家賞受賞)
奥山淳志(第35回東川賞特別作家賞受賞)
上原沙也加(第36回東川賞新人作家賞受賞)

<レビュー結果>
【石川直樹・選】
【選出作品/組写真】
鈴木雅治「緑香」(日本大学芸術学部写真学科)

【選出理由】
何か自分なりの表現をしようと背伸びするような作品が多い中、鈴木さんの写真は、記録することに寄り添った作品でした。それも、被写体と関係を築きながら、丁寧に向き合っているように見受けられて、好感が持てます。
写真のセレクトも緩急があり、プロセスをただ撮った写真ではなく、自分なりの視点があります。


【選出作品/気になる1枚】
趙 子臻(東京綜合写真専門学校)

【選出理由】
家の外側を撮ったものですが、窓の明かりから、家の内部への想像をかきたてられます。密室で何がおこなわれているのか、何もおこなわれていないのか。平凡さと怪しさの両面があり、主張しすぎていないがゆえに、観るものに、想像力の余白を与えます。
窓が内と外を繋ぐ境界線となっていてよかったです。篠山紀信の「晴れた日」に出てくる家をちょっと思い出しました。

【奥山淳志・選】
【選出作品/組写真】
原 加那子「佐世保」(東京工芸大学芸術学部写真学科)

【選出理由】
さまざまな見方ができる写真があったので、選ぶ際本当に悩みました。自分自身が撮る側として、切実なものにどうしても惹かれてしまうということもあり、今回は作家が切実なものを表現しているか?という点で決めました。
この「佐世保」は祖父が亡くなったあとに“おじいちゃんがつくった構造物”を写したもの。「亡くなった祖父」と「祖父がつくったもの」が時間差で消えていく、その2重に消えていくことを捉えるのは写真だからできる行為かなという面白さを感じました。
一見すると、なんだろう?と脈略がないようにも見えるドライな撮り方も原さんのアプローチだと思います。消えていく存在としての土や木、コンクリートなどを写すなかで、もう少し琴線に触れるものやおじいさんを感じさせる“何か”が見えてくるよう続けて撮ってほしいです。消えていくといってもある程度の時間を要する被写体ではあるので、これからの表現に期待しています。

【選出作品/気になる1枚】
張 宏遠「16.675k㎡」より(日本写真芸術専門学校)

【選出理由】
1860年から1945年の間に米仏など9つの国によって自治が変わった、という天津の歴史的な背景から撮られた写真です。今回は5枚展示されていましたが、そのなかから1枚を選びました。
5枚組の1枚目となる、人々が会食している何気ない写真には確かに歴史が写っているような印象を受けました。写真はある意味、現実を過去に押し出す行為でもありますが、この写真にはカメラの前の現実よりもさらに奥に潜む過去が見えるような気がします。このテーマでもっと深くいけるなら、僕はさらに見てみたいと強く感じました。
張さんは自分の社会的な生い立ちからものを見ようとしていて、ステートメントを読むとそれは現在の天津の人にとっては日常と化してしまった風景であると。そういった現実を我が事として見ようとしていることについて、これからどういったアプローチをしていくのか?そしてこの視点を表現することによって天津の人たちはどう見るのか?といったことを感じました。表現する側と見る側で何かが変わっていくかもしれないですね。長く取り組めるテーマだろうし、現時点ではまだ少し物足りなさを感じるので、このままさらに取り組んでいってほしいと思います。

【上原沙也加・選】

【選出作品/組写真】
張 宏遠「16.675k㎡」(日本写真芸術専門学校)

【選出理由】
どこの国なのか一見判断し難いような風景の写真の並びをじっと見つめていると、静粛な画面の中に複雑な歴史を辿ってきた天津という場所の社会的背景が浮かび上がってくるように感じました。何層もの文化の奥行きをそれぞれの写真の中に見ることができて、それが今の情勢を照らし返すような批評的な作品だと思います。何気無い「日常」の風景も、社会や時間の流れによって消えてしまったり、また別の「日常」に取って代わるということを、写真を見ていると強く意識させられます。
「16.675k㎡」という空間がタイトルに選ばれていることも気になりました。これは天津という地名を持つ場所の大きさなのか、それともどこか別の空間を指しているのか、思案を巡らせたくなります。言葉でもこの空間の持つ意味について少しだけ触れてみてもいいかもしれません。もっと多くの写真と共にまとめて拝見してみたいです。


【選出作品/気になる1枚】
趙 子臻(東京綜合写真専門学校)

【選出理由】
夜が訪れる少し手前の、見ていてなんとなくさびしさを感じるような時間の中に、電線や不思議な形の小屋やトラックが佇んでいて、どこか懐かしさを覚える写真だなと思いました。それからすっと目線を降ろすと、ピカッと目を光らせている猫がこちらを見つめていて驚きました。一枚の写真の中に事物の在り方を二度発見することは、あまり感じたことのない不思議な経験でした。
さらに細かく見ていくと、周辺の植物の小さな花までも発光しているように見えてきたり、光る目の猫から離れたところに餌が置かれていたりと、画面の中に緊張感のある秩序が保たれていて、一枚の写真のなかにぎゅっと世界が濃縮されているようです。
この写真から得られる複数の発見を手がかりにしながら、さまざまな写真を撮り進めてほしいと思います。また不思議な体験をもたらしてくれる写真に出会えることを楽しみにしています。

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選出された学生のみなさん、おめでとうございました!

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