AWARDS東川賞

国内作家賞

長島有里枝
NAGASHIMA Yurie
東京都在住

受賞理由

受賞理由:展覧会「長島有里枝 そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」(東京都写真美術館、2017年)、「作家で、母で つくる育てる 長島有里枝」(ちひろ美術館、2018-19年)、「知らない言葉の花の名前 記憶にない風景 わたしの指には読めない本」(横浜市民ギャラリーあざみ野、2019年)ほか、一連の作品に対して

1973年東京生まれ。1993年、武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科在学中に、家族とヌードで撮影したセルフ・ポートレイトで「アーバナート#2」パルコ賞を受賞。1990年代の「女の子写真」と呼ばれる潮流を先駆した写真家として注目を浴びる。ヌードや女性性を強調するメディアの評価と、自身のアートとしての実践との違和から渡米し、1999年、カリフォルニア芸術大学ファインアート科写真専攻修士課程修了。2001 年、写真集『Pastime Paradise』(マドラ出版、2000年)で第26回木村伊兵衛写真賞受賞。2011年から武蔵大学人文科学研究科博士前期課程にてフェミニズムを学び、2015年同課程修了。2020年、修士論文をもとに、『「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ』(大福書林)を出版。「女の子写真」に対する批判的検討と、世界的なフェミニズムやアートの潮流に通じるガーリーフォトとしての再評価を行った。

個展「そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」(東京都写真美術館、2017年)では、初期を代表するセルフ・ポートレイトや家族のシリーズのほか、女性のライフコースに焦点を当てたインスタレーションを発表。「作家で、母で、つくる育てる 長島有里枝」(ちひろ美術館、2018年)では、自身の子の幼い頃の姿を撮影した写真のほか、「家庭」と紐付けて語られることの多かった女性にとっての創作行為を問うシリーズ「家庭について/about home」、第二次世界大戦中に日本の女性たちが行った「千人針」をテーマとした作品を展示。「知らない言葉の花の名前 記憶にない風景 わたしの指には読めない本」(横浜市民ギャラリーあざみ野、2019年)では、全盲の女性との対話から得たインスピレーションをもとに、写真、テキスト、記憶の問題を問いかけるような作品を発表した。家族や身近な人との関係性を手がかりに、社会や女性のあり方への違和感を掘り下げるような作品の制作を続けている。

作家の言葉

2016年から3年半、個展や二人展を立て続けに開催して得たものは大きかった一方、経済的に困窮し、生活者として追い詰められていく現実と向き合ってきました。作家を続けていくことが自己満足以上のなにかであってほしいと切に願いながら、経済的な自立が難しいせいで、自分と自分のやっていることには何の価値もない、という結論に至る日も少なくありません。そのようななか、東川賞受賞の報を受けていま、自分を信じて先に進んでいいよ、と背中を押されたような気持ちです。拙い活動を見ていてくださった方々に、心からお礼を申し上げます。

どのような言説が、なにを「芸術」とみなすのか。「価値」の有無を隔てる基準は、どのように生み出されるのか。写真を始めて30年、変わらず問い続けてきたのはそのことです。「女の子写真」への不信感が、わたしを社会構築主義と出会わせてくれました。「個人的なことは政治的なこと」という信念を胸に、これからも制作を辞めずに生きていきます。

山、ルツェルン、スイス
2007
線路脇の花、東京
2000
Still life #4 (about home)
2015
Torn blankey (about home)
2015
Rice cake on fire
2015
Self-portrait
2015