AWARDS東川賞

国内作家賞

鷹野隆大
TAKANO Ryudai
東京都在住

受賞理由

写文集『毎日写真』(ナナロク社、2019年)、展覧会「毎日写真1999-2021」(国立国際美術館、2021年)に対して

1963年福井県生まれ。’87年早稲田大学政治経済学部卒。セクシュアリティをテーマに’94年より作家活動を開始。

女か男か、同性愛か異性愛かといった二項対立の狭間にある曖昧なものの可視化を試みた写真集『IN MY ROOM』(蒼穹舎、’05年)で、’06年に第31回木村伊兵衛写真賞を受賞。’98年より、毎日欠かさず撮ることを自らに課したプロジェクト「毎日写真」を開始、現在まで続けている。その中から日本特有の無秩序な都市空間を、所謂カスのような場所、略して“カスバ”とし、それを複数形にした造語をタイトルにして編んだ写真集『カスババ』(大和プレス、’11年)を発刊。その後、東日本大震災を機に、都市や空間、写真というメディア、人間の視覚ということについて、あらためて問い直すことになる。そこから古典技法や動画などを使い、影をテーマに種々の作品制作に取り組み始める。

’19年には写真、性、文学についてなど幅広い題材について写真作品とともに綴った、初となるエッセイ集『毎日写真』(ナナロク社、’19年)を上梓。近年の主なグループ展に『愛すべき世界』(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、’15–‘16年)、『シンクロニシティ−平成をスクロールする 秋期』(東京都写真美術館、’17年)などがある。’21年には、総枚数が10万枚にもなろうとしている「毎日写真」から選出した写真を中心に、ジェンダーやセクシャリティなども含め、これまでの活動の軌跡を追った大規模な個展「毎日写真1999-2021」(国立国際美術館、大阪、’21年)を開催。見ることとは何かを観客に問いかける展示空間も話題となった。’22年、第72回芸術選奨文部科学大臣賞(美術部門)受賞。

また、’10年には同世代の写真家鈴木理策、松江泰治、評論家の倉石信乃、清水穣らに呼びかけ「写真分離派」を立ち上げ、21世紀に入り大きく変化する写真のあり方を、対談や展覧会を通して記録し、『写真分離派宣言』(青幻舎、’12年)にまとめる。

様々な角度から視覚における価値のヒエラルキーや、写真という媒体の特性について日々考察を重ねている。

作家の言葉

実は東川町の写真フェスティバルには数年前まで毎年通っていました。この賞とは別の部門で審査を担当していた関係です。初年は東日本大震災のあった年で、様々な混乱を引きずる中、東川町の方々の温かいおもてなしに気持ちが和らいだことを今もはっきり覚えています。夏の夕暮れ、普段あまり話す機会のない方々と取り留めのない雑談をしながら過ごした時間は、贅沢な思い出となっています。このフェスティバルには場としての豊かさがあります。そしてその豊かな土壌の中から「写真の形」を問い続けてきたのがこの賞だと思います。

現在、写真の輪郭が急速に崩れています。しかしこのような状況だからこそ、わたしの地味な活動が評価されたのだと考えています。わたしはこれまで、人々の思考に影響を及ぼし続ける写真というものについて実践面から探求してきました。今回、写真について考えることの意義と勇気を改めて与えていただいたことに深く感謝しています。

鷹野 隆大

赤い革のコートを着ている
「IN MY ROOM」シリーズより
2002年
©Takano Ryudai, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
2011.03.11_T
「東京タワー」シリーズより
2011年
©Takano Ryudai, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
2013.03.02.M.#e08
2013年
©Takano Ryudai, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
2017.09.23.#12
「カスババ2」シリーズより
2017年
©Takano Ryudai, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
2018.03.03.D.#02
「Green Room Project」シリーズより
2018年
©Takano Ryudai, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
2018.11.14.#05
「毎日写真」シリーズより
2018年
©Takano Ryudai, Courtesy of Yumiko Chiba Associates