AWARDS東川賞

飛彈野数右衛門賞

太田順一
OTA Junichi
奈良県在住

受賞理由

受賞理由:写真集『ひがた記』(海風社、2018 年)、『無常の菅原商店街』(ブレーンセンター、2015 年)、『群集のまち』(ブレーンセンター、2007 年)ほか、関西地方を撮影し続けてきた作品に対して

1950年奈良県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。大阪写真専門学校(現・ビジュアルアーツ専門学校・大阪)卒業。新聞社でカメラマンとして勤めた後、フリーランスとなる。

1983年より猪飼野(大阪市生野区)に暮らす在日朝鮮人たちや、大阪の大正区に多く暮らす沖縄の人たちを撮影。1998年からは、全国にあるハンセン病療養所を回って、入園者や、風景、部屋の細部 の撮影を行う。同時期に、大阪湾岸の工業地帯でひっそりと咲く花の撮影をはじめ、初のカラー写真集 『化外の花』(ブレーンセンター)を出版、日本写真協会賞第一回作家賞受賞。この頃から、「人」よりも、人や自然の営為の痕跡をとどめる「もの」をとらえた写真の発表をはじめる。

2007年、大阪24区を順に歩き、人影のない街角の風景を撮った写真集『群集のまち』(ブレーンセ ンター)を出版。亡き父が認知症になる前から20年間毎日書き続け、老い、変容する様が文字や文章からまざまざと読み取れる日記を複写した写真だけからなる展覧会「父の日記」(銀座、大阪ニコンサロン、2009年)で、第34回伊奈信男賞受賞。

阪神大震災で大被害を受けた菅原商店街(神戸市長田区)の焼け跡を、震災直後におがむように撮り進めた写真と、栄枯盛衰をあわせもつ大和の風景を地続きに並べた『無常の菅原商店街』(ブレーンセンター、2015年)や、大阪湾の環境再生実験のため、岸和田の沖合いにつくられた人工の干潟に消えては現れる世界の痕跡をとらえた『ひがた記』(海風社、2018年)など、近年では連綿とつながる命の「永遠」の相を、写真に撮り収めるような活動を行っている。

作家の言葉

奈良に住みつつ大阪を仕事のベースキャンプとして、写真のいとなみを40年余り続けてきました。撮影する場所の多くは自分の生活圏である関西です。

わざわざ遠くへ出かけなくても、撮るべきものは地元にもいっぱいあるからですが、一方でまた、生活者としての身体感覚を大切にして身近なところをこそちゃんと見ていきたい、との思いを もっているからです。

さらにいうなら、人がふだんの暮らしのなかで身近なだけに見てはいるけれど見ていないもの、それを写しとめたいとも願ってきました。実現できているかどうかはともかく、そういった姿勢が 今回、評価していただけたのかなと、手前勝手な推測をしています。

受賞を知らせる電話は、道を急いでいた京都・三条大橋のたもとで受け取りました。鴨川に吹く風が妙にくすぐったかったです。私を選んでくださった方々、そして賞の運営に携わっておられるすべての方々に心からお礼を申しあげます。ありがとうございました。

日本のなかの朝鮮 大阪
『女たちの猪飼野』より
1983
本土のなかの沖縄 大阪
『大阪ウチナーンチュ』より
1992
荒地に咲く花 大阪
『化外の花』より
1999
大阪24区を歩く 大阪
『群集のまち』より
2004
遠い日の痕跡 奈良
『遺された家ー家族の記憶』より
2011
現れては消える世界 大阪
『ひがた記』より
2006