AWARDS東川賞
飛彈野数右衛門賞
受賞理由
写真集『見果てぬ海』(赤々舎、2020年)と同作に関連した一連の写真展に対して
1985 年長崎県生まれ。2010 年北海道大学農学部森林科学科卒業。
長崎の離島出身のルーツと、自身が移り暮らしてきた国内外の土地の経験を通して、移民や人の移動がもたらす光景と文化、土地と記憶、信仰などを題材に地域の歴史と個人の記憶を行き来しながら制作する。ある土地で撮影されたイメージを現地で展示し、写真と人の間に生じる対話の過程と、それをまた別の土地に展開することまでを含めて一連の表現と捉え、実践している。
東京で編集者・記者として働きながら、2011年の震災を機に写真を撮り始める。2014 年に独立し、ブラジルと南米に 1 年間滞在。アマゾン河やチリの多島海で見た素朴なキリスト教会のある風景が故郷に重なり、帰国後に長崎の海を巡る旅をはじめる。
2020 年に写真集『見果てぬ海』を赤々舎より上梓。ニコンサロン東京で個展「見果てぬ海」を発表、2024 年までに長崎県西海市、長崎市、五島市や福岡、大阪、宮城、札幌など全国 8 会場に巡回。また長崎の海景をモチーフにした「NAGASAKI SEASCAPES」Alt_Medium (東京、2021年)、土着のカトリック教会を写した「土地の教会」EUREKA (福岡、2025年)、幼少期の記憶を巡る「海の記憶」Galley Y (茨城、2022年) / LIBRIS KOBACO (福岡、2024年) など、これまで長崎の海をテーマにした計14回の個展を開催してきた。
主な受賞歴として、写真展「ジャシム一家」で第20回三木淳賞 (2018年)、「見果てぬ海」で日本写真協会新人賞 (2022年)、『密航のち洗濯』(共著・写真編集、撮影)で第46回講談社本田靖春ノンフィクション賞(2024)。
写真集『北海道』(赤々舎) を2026年2月に刊行した。
作家の言葉
波の音。 潮の香り。 海はいつも目の前に広がっていた。
私は長崎県西海市の沖合に浮かぶ、 松島という小さな離島で育ちました。 西の海を見渡すと、 遠く沖には五島列島が連なっています。リアス式の複雑な地形をもつ長崎県の海には、70余の有人島を含む日本最多の約1500の離島が浮かびます。海の向こうの島へ渡ると、そこから自分が旅立った海岸や別の島が見えてくる。さらに先の島に移ると、また違う島と風景が立ち現れる。長崎の海はそうした見る、見られるを繰り返す環世界です。
故郷の島を離れたのは16歳になる年でした。長崎市、北海道、東京と移り住み、二十代の3年ほどは海外を旅しました。ちょうど人生の半分を育った島から離れて暮らした頃、自分の故郷のことをもっと知りたくなり、写真機を持って長崎の海を旅することにしました。 そのような経緯で生まれたのがこの「見果てぬ海」という作品群です。
飛彈野数右衛門賞受賞の知らせは青天の霹靂でした。九州を拠点に、主に地方で制作と展示を続ける私にとって、 同じく地方に在って輝く東川町より栄誉ある賞を頂くことは、大きな励みになりました。
2015年には、東川町からラトビアの写真サマースクールに派遣して頂きました。翌年夏の赤レンガ倉庫展 が私の初展示でしたので、思い出の地で10年ぶりに写真祭に参加できることは感慨深いです。東川町の皆様をはじめ、これまでお世話になった各地の方々にもこの場を借りて感謝を申し上げたいと思います。
田川 基成
Girl leaving the Island, En route from Fukue to Nagasaki, 2019
Fukaura, Hisaka Island, 2019
Cabin, En route from Seto to Matsushima, 2019
Nozaki, Nozaki Island, 2017
View from ship window, En route from Aokata to Naru, 2019
Sanohara Church, Nakadori Island, 2019
