AWARDS東川賞

新人作家賞

岩根愛
IWANE Ai
東京都在住

受賞理由

受賞理由:写真集『KIPUKA』(青幻舎、2018年)、展覧会「あしたのひかり 日本の新進作家 vol.17」(東京都写真美術館、2020年)ほか、一連の発表活動に対して

1975年東京都生まれ。’91年単身渡米、ペトロリアハイスクールに留学し、オフグリッド、自給自足の暮らしの中で学ぶ。帰国後、アシスタントを経て’96年より写真家として活動を始める。
’06年、初めて訪れたハワイで、ハワイ最古の日本仏教寺院であるハマクア浄土院に出会い、日系移民の歴史を知る。ハワイの寺院で開催されるボンダンス(盆踊り)の熱気に魅せられ、以来ハワイに通い、ボンダンスを巡る。
’11年、ハワイ各地のボンダンスで生演奏される『フクシマオンド』の原曲が、東京電力福島第一原発事故により避難区域となってしまった地域の盆唄、相馬盆唄であることを知り、東日本大震災後の福島へ取材を重ね、福島県三春町にも拠点を構える。

1930年代にハワイの日系写真館で葬儀などの集合写真撮影に使用されていた回転式大判パノラマカメラ「サーカット」を修復し、福島の避難区域とハワイの移民一世の墓地を360度撮影するなど、移民を通じたハワイと福島の関連をテーマに、’18年にハワイ島で発生した大規模な溶岩流や、美しくも厳しいハワイの自然を織り交ぜ、’18年初の作品集『KIPUKA』(青幻舎)を発表。第44回木村伊兵衛写真賞、第44回伊奈信男賞を受賞する。ハワイと福島県双葉町の盆唄奏者の交流を描いたドキュメンタリー映画『盆唄』(中江裕司監督、テレコムスタッフ)をアソシエイト・プロデューサーとして企画、’19年に公開。盆唄を通じたハワイと福島の橋渡しを続けた足掛け12年の活動の様子を綴った書籍『キプカへの旅』(太田出版)を出版。’20年に参加した「あしたのひかり-日本の新進作家Vol.17」(東京都写真美術館)では、福島の避難区域内に咲く桜と、コロナで人影の消えた三春、北上、遠野、一関、八戸の夜の桜を撮影した「あたらしい川」を出品。同時に作品集『A NEW RIVER』(bookshop M)を刊行する。

作家の言葉

『KIPUKA』とは、ハワイ語で溶岩流のあとに島のように残った植物のことで、その種子が再生の源となる、「新しい命の場所」を意味する。

福島からハワイへ、移民とともに渡った盆唄『フクシマオンド』を追い、旅を続けてきた。12年を越えた取材期間は、盆唄の流れる果てなき時間を知ることであった。

天明・天保の大飢饉により農民が激減した相馬藩に招かれ、越後から相馬へ、多数の相馬移民が入植した頃、相馬焼の陶法を学んで越後に持ち帰った人物がいると知った。やがて松郷屋焼として定着した徳利に、酒や醤油、焼酎を詰め、越後から北海道へ、開拓移民と共に海を渡ったと知ったのは、思いがけないことだった。

消失と喪失の繰り返しの中で生き続ける唄を、世紀を超えて継いでいく人たちの熱意は、長い時間の中で私が生きる時間がここであること、それが奇跡のようなことだと気づかせてくれた。この度の東川賞新人賞受賞は身に余る光栄です。

岩根 愛

KIPUKA
Shosuke Nihei, Kailua Camp, Kailua, Hawaii
2016
KIPUKA
Ookala, Hawaii
2006
KIPUKA
Paia Mantokuji Soto Zen Mission, Hawaii
2015
KIPUKA
Kalapana, Hawaii
2010
A NEW RIVER
Tenshochi, Kitakami, Iwate
2020
A NEW RIVER
Takashiba Dekoyashiki, Koriyama, Fukushima
2020