AWARDS東川賞

海外作家賞

アルトゥーラス・ヴァリャウガ
Arturas VALIAUGA
リトアニア共和国・ヴィリニュス在住

受賞理由

写真集『About the Land of Longing』(2013年)など、一連の作品に対して

1967年リトアニア・ヴィリニュス生まれ、同地在住。

ヴィリニュス工科・デザイン大学で写真の技術を学び、2010年にヴィリニュス芸術大学で写真とメディアアートの修士号を取得した。

ヴァリャウガは、1990年半ばから一貫して社会的アイデンティティと時間をテーマに作品を制作してきた。リトアニアの歴史とソビエト時代の経験が、彼のすべてのシリーズやプロジェクトの支点となっているが、その姿勢が過去への追慕や懐古主義に陥ることはない。今日、私たちを取り巻く環境を丁寧に観察し、何が残っていないのか、何が変わったのか、なぜ変わったのかを、写真を通して検証しようとしている。近年は、特に現在のヨーロッパや世界の中におけるリトアニアのアイデンティティを問う作品を制作している。

主な個展に、「Still Identity」国立美術館(ヴィリニュス、2006年)、写真美術館(シャウレイ、リトアニア、2007年)、ゲーテ・インスティトゥート(ロッテルダム、オランダ、2008年)、「Between the Shores」現代美術センター(グダンスク、ポーランド、2008年)、カウナス・フォトグラフィ・ギャラリー(カウナス、リトアニア)、「In Trust: Reframing Wales Histories」Turner House Galley(ウェールズ、イギリス、2016年)がある。

作品は、国立美術館(リトアニア)、MO Museum(リトアニア)、ライデン大学図書館(オランダ)、サンダーランド大学(イギリス)、Imago Mundi Collection(イタリア)などでコレクションされている。

 

作家の言葉

写真の町東川町の海外作家賞を受賞できたことを光栄に思います。日本は、私の故郷から遠く離れていますが、私の心にはとても近い場所です。

私にとって写真とは、旅であり、冒険であり、新しいことを経験し発見する機会でもあります。そしてカメラは、異なる現実―すなわち、もはや存在しない、変わりゆく現実への扉を開く鍵です。写真を撮ることは、他者の人生を覗き込み、それを自分のものとして飼い慣らし、あたかも自分の記憶であるかのように経験する手段といえます。写真には、人と彼・彼女らを取り巻く環境の相互関係の結果として、時間が刻まれます。これは、色、光が描く線、記憶、あるいは明日への予感としてイメージというメディウムの中に残された存在から、感じたり、見たり、あるいは推し量ることができるのです。

イメージは、私生活、時間や記憶の表徴が展開する、社会的なコミュニケーションや対話の領域を創り出し、明確化します。写真という宙を漂う現実は、過去の記録であり、それは情緒的瞬間の主観的な経験として息を吹き返します。

写真における真実とは、目に見えるものではなく、見ることで感じられるものです。

私は写真の力を信じてはいませんが、人々や取り巻く環境が示す表徴を信じています。そのイメージが、写真として姿を留めるのです。私は、自分がそのすべての一部を成していると感じています。

イメージが顕わにするコンテクストは、イメージそのものよりも重要なものとなるのです。

 

アルトゥーラス・ヴァリャウガ

スティル・アイデンティティ
Still Identity
2005-2006
Isaakas Kaplanas. In Memoriam.
Amsterdam. The Netherlands.
イサーカス・カプラナス 追悼
アムステルダム、オランダ
スティル・アイデンティティ
Still Identity 
2005-2006
Dutch Soldiers. NATO in Šiauliai. Lithuania.
オランダ兵士たち NATOシャウレイ基地 リトアニア
岸と岸の間に
Between the Shores
2007-2008
Fellow Passenger
同乗者
岸と岸の間に
Between the Shores
2007-2008
Caboose 
最後部
憧れの地
The Land of Longing
2012–2013
Gate to Perkaliai Manor, 2013
ペルカライの荘園への門、2013年
憧れの地
The Land of Longing
2012–2013
Budrys’ house doorstep, 2012
バドリス家の玄関先、2012年