AWARDS東川賞
海外作家賞
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受賞理由
『The Mirror』(2016-2017年)、『Forget Me Not』(2017年)、『All Things Considered』(2019年)など、一連の作品に対して
1995年、ベトナム・ハノイ生まれ。カメラを使ってジェンダーやアイデンティティなど自分自身を定義する概念、ベトナム文化の変化について考察している。
最初にカメラを向けたのは当時の恋人。クィアな女性として、何を秘密にし、何を世に問うべきかを激しく議論してきた二人の関係と取るに足らない暮らしぶりの細部を記録し、「The Mirror 」として発表。その後、カンボジアのシェムリアップのサービスガールを追った「Forget Me Not」、インド・コルカタの男性レスラーのポートレート「Hardboiled」、ベトナムの少数民族をドキュメントした「Red Dust」など、外の世界に入り込み、その地の人々のポートレートを通してジェンダーやセクシュアリティ、複雑な社会構造や、民族、文化ということを考察している。制作中の最新作「All Things Considered」では、現代のベトナム社会で写真がどのように記憶や歴史を構築していくかを探っている。法医学的な視点で写真を用い、正当防衛で夫を殺害した女性の視点から殺人事件を再考し、カメラという機械的な道具を使い、私たちが見ることができた/できなかったイメージを視覚化し、重層的で思索的な作品の制作を試みている。
主なグループ展に「アジアの女性写真家のショーケース」(Objectifs Centre for Photography & Film, シンガポール、’17年)、「セカンドオピニオン ~ハノイの新しい写真」(マンジアートスペース、ハノイ、ベトナム、’18年)、「洞察~アジアの女性写真家展」(謝之龍博物館、長沙、中国、’18年)、「破壊の彼方へ」(VICASアートスタジオ・ベトナム国立文化芸術研究所、ハノイ、ベトナム、’19年)などがある。
日常生活で起こる奇妙な出来事からインスピレーションを受け、想像力豊かなアプローチでドキュメンタリーを制作し、緻密な観察と豊かな連想のもとに構成された作品を発表している。
また、‘17年より、ベトナムの現代写真の動向を伝える非営利のオンライン雑誌「Matca」の編集長を務める。写真家や写真ファン、研究者、批評家向けに、英語とベトナム語のバイリンガルで、写真に関する200タイトル以上の記事を紹介し、アーカイブしている。
作家の言葉
第38回写真の町東川賞海外作家賞の受賞者に選ばれたと聞き、椅子から転げ落ちそうになりました。アート作品を作り始めてからまだ少ししか時間が経っておらず、未だ写真との関係性を今この瞬間も見出そうとしています。そんなまだあまり知られていないベトナム出身の若い写真家として、このような名誉ある賞をいただけたことに、最初こそ戸惑いましたが、心から嬉しく思っております。
私は以前から日本の写真、特に同じ東川賞を受賞した川内倫子、志賀理江子、長島有里枝(敬称略)などの女性作家作品のファンでした。彼女達の作品のおかげで、私は女性が自分らしく生きた経験や優しさを享受することができ、また単に記録するだけではなく想像するためのカメラの力を理解することができました。これは最も重要なことであり、男性が優位な職業であるという固定概念がある以上、簡単なことではありません。言うまでもないことですが、彼女達と同じ場所に共に立てたことを非常に光栄に感じています。
私は正式な芸術教育は受けていませんが、自分自身を独学の写真家だとは決して思いません。この素晴らしい機会をお借りして、私のような若い声を取り上げるためにたゆまぬ努力を続けてこられた私の師や独立系機関の皆様―ジェイミー・マックストーン・グラハム、アンコール・フォト・フェスティバル、ジュアン・ウービン、マンジ・アート・スペース、ヘリテージ・スペース、そして最後にMatcaの素晴らしい仲間達―に感謝いたします。すべて私の出身地であるハノイのローカルアートコミュニティーのおかげであり、この恩を次に送れるよう私にできる限りのことを続けて参ります。
2022年4月4日 ハ・ダオ





