AWARDS東川賞

海外作家賞

莫毅(モ・イー)
Mo Yi
中華人民共和国/浙江省在住

受賞理由

受賞理由:『1m、私の後ろの風景』(1989年)、『私は犬だ』(1996年)及び一連の作品に対して

1958年、中国・チベットに生まれる。元々サッカー選手だったが、そのキャリアを断念。’82年、初めてカメラを手にし、文学や絵画のように、写真を通して自由な表現の世界を目指す。’84-87年、父親世代のポートレートを表した個展「父親」(’87年天津市群衆芸術館での大型サロン展)でデビュー。当時の美術界で描かれていた父親世代の力強さや優しさなどからは距離を置き、ぎこちなさ、歪みなど複雑な人間性を表し、新たな視点を示した。’89年のグループ展で発表した「1m、私の後ろの風景」(天津市中心公園展示ホール)は、カメラを首の後ろの襟の部分に設置し、レンズを後ろに向け、5歩歩くごとにシャッターを切るというパフォーマンスアートから生まれた。そこには、天安門事件前夜の人々の憂鬱、孤独といったものが映り込んでいる。残念ながら、展示開始の2日後、作品は会場から撤去される。’95年に雑誌『大衆撮影』で発表した「犬の目の写真」では、カメラにモーターを付け、三脚に装着して、それを逆さまにして持ち歩き、もう一方の手でレリーズを持って、街を歩きながらノーファインダーでシャッターを切っている。“犬の目で見た世界”と誤解されることが多かったので、タイトルを「私は犬だ」に変更。物事をはっきりと言えない人は動物と同じで、世界を見る必要がないという考えが本作の手法につながっている。’97年に発表した「レッドフラッシュ – 私のいる風景」や、’04年の「レッドフラッシュ – タカコの赤いドレス – 北京を歩く」、’11年 の個展「赤色の風景」(Zen Foto Gallery、東京)では、これまでの手法にフラッシュと赤いプラスチック板を使って、フラッシュの届く世界を赤色に染める作品を発表している。中国において赤色がもつ特殊な意味、政治や時代と人々の精神的な関係性を考察している。写真家として、写真というメディウムのみならず、常に個人と、社会、国家のあり方を問う作品作りを続けている。

 

作家の言葉

突然に受賞の連絡が来ました。中国の国内では、私が権威のある賞に評価されることはあり得ないことです。最近の中国写真は、様式にこだわり、現代アート的なアクセントで、作り込んだ写真が好まれます。

でも、驚きませんでした。私の仕事は、写真表現領域の開拓において重要な役割を果たしてきました。2000年以前、ポスモダニズム的な芸術思想をもって、実験的で、中国の現実を反映するような写真を作る作家は、私以外には存在しませんでした。

今回、私の最初の喜びは、80年代生まれの研究者で写真家の高岩くんとの交流でした。私が試みた写真表現は、精神的な意味で言うと、「PROVOKE」だと言ってくれました。彼は、私にとって、世代を超えた真の友です。彼に推薦されて、とても嬉しく思いました。

そして、嬉しい気持ちが続きます。東川賞の審査員の方々は、中国にいらっしゃっていないので、中国の現実をよくご存知ないはずですが、私の作品を通して、その息吹に触れていただいたのでしょうか。私の作品が、写真の歴史的文脈を踏まえ、地理的な条件や物語を超えて伝わるのだと確信できた出来事となりました。紀実という手段は、物語ではなく、人間の共通する感情と精神を伝達することができます。

民族や国境の壁を越えて友人の皆さんに認められたのは、私には最高のプレゼントであり励みになります。感謝の気持ちで一杯です。

莫毅
2021/4/11

「1m、私の後ろの風景」より
from the series "1m-The Scenery Behind Me"
1988
「1m、私の後ろの風景」より
from the series "1m-The Scenery Behind Me"
1988
「私は犬だ」より
from the series "I am a Dog."
1995
「私は犬だ」より
from the series "I am a Dog."
1995
「レッドフラッシュ-僕のいる風景」より
from the series "Red flash-Me in my scenery"
1997
「レッドフラッシュ-Takakoの赤いスカート-北京を歩く」より
from the series "Red flash-Takako’s red skirt-Walking in Beijing"
2004