AWARDS東川賞
海外作家賞
受賞理由
『CIRCULAR WAIT + SATELLITE + SECOND NATURE』(Livraison Books and Art and Theory、2015年)、『Shadow Works, Living the Dream』 (Livraison Books、2025年)など、一連の作品に対して
1973年生まれ。写真、映像、ブックメイキングを主な表現手段とし、フィルターを通した光、音、イメー ジの相互作用を中心に制作を行う。ニューヨーク、パリ、ロンドンで国際的なフォトグラファーとして活動 した初期のキャリアを経て、2002年にストックホルムに拠点を移し、現在も同地で制作を続けている。パーソンズ美術大学(パリ、ニューヨーク)で(1992–1996年)美術学士を取得。その後、ストックホル ムの国立美術・工芸・デザイン大学(2015–2016)に在籍し、王立美術大学のポストマスター・プログラ ム(2019–2022)を修了した。
イヴァノヴの作品は、非線形で連想的な構造を特徴とし、フィルムの不透明性と透明性を実験的に探るアナログ技法を多用している。これらの手法は、従来のものの見方に揺さぶりをかけ、単純な解釈を拒 む多層的な視覚体験を生み出す。近年の作品では、気候変動に対する感情的な反応や、新たなテクノロジーがもたらす社会的・空間的影響といった、現代の不合理な底流にも着目している。
また彼女の実践は、社会構造に対する力強くも繊細な反応を映し出しており、その多くは場所や個人、 サブカルチャーの表象を通じて展開される。イヴァノヴはサブカルチャーを支配的な規範への反応と捉え、社会に欠けている何かを指し示している。
作品は国際的に広く発表されており、ベルリンのDorothée Nilsson Gallery、ストックホルムの Kulturhuset、ニューヨークのエルメス財団などで展示された。近著に『Early Reading』(2018年)、最新作『Shadow Works, Living the Dream』(2025年、Livraison Books)など。現在は、自然の中での共同生活を求める人々を追った長編ドキュメンタリー『Second Nature』を制作中。 www.martinahooglandivanow.com
作家の言葉
写真の町東川より海外作家賞をいただいたことを大変光栄に思います。私の日本文化への関心は長く 深く、文学、美術、造本、写真、映画といった分野から多くの影響を受けてきました。そのため、このような評価は私にとって特別な意味を持っています。
私にとって写真とは、現代社会の複雑さや矛盾に対する継続的な関心から生まれるものです。それは 私の作品全体を貫く一本の糸のようなものであり、制作のプロセスは、人間の経験における二重性や、自己と外界との関係性を探るための手段となっています。
造本や編集の過程で、私は反復と抽象化の可能性について思考を重ねます。不条理性や演劇性、そして私たちがどのようにしてアイデンティティを確立し演じているのか、といったテーマが繰り返し浮かびあがり 、たびたび自然界や人間関係とつながります。それが作品の中で幾重にも重なり合い、織りなされているのです。私は、人間を奇妙な種だと感じています。何をすべきかを理解していながら行動できないこともあれば、破壊的である一方で、驚くべき可能性を秘めてもいます。
カメラとの関係においては、視覚的なずらしや影の操作を用い、削ぎ落とされ、抽象化された視覚言語を生み出す方法を発展させてきました。アナログ写真と暗室での作業はこのプロセスの中核をなしていま す。ネガの不透明性と透明性を押し広げることで、「不在」の可能性に向き合っています。カメラはしばしば人間の目では捉えきれない情報を記録します。だからこそ私は、あえて「少なく見せる」ことの可能性を探求しているのです。
マルティナ・ホーグランド・イヴァノヴ
From Circular Wait, 2010–2014
From Circular Wait, 2010–2014
From Circular Wait, 2010–2014
From Circular Wait, 2010–2014
From Shadow Works, Living the Dream, 1994–2024
From Shadow Works, Living the Dream, 1994–2024
