AWARDS東川賞
特別作家賞
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受賞理由
「潮騒の部屋」シリーズ(2024年)に対して
1987年北海道生まれ。京都・東京在住。日本大学芸術学部写真学科卒業、京都造形芸術大学(現京都芸術大学)大学院修了。在学中に写真の古典技法や古写真に関する歴史を学び、美術と繋がりのあるピンホール現象やカメラオブスクラなどの技術に注目するようになる。
自ら撮影した阪神淡路大震災で被災した部屋の写真を20年以上の歳月を経て見返したとき、そこに地震そのものは写っていないことに気づくと同時に、被災前の日常の記憶が甦ったという経験から、写真が内包する二つの意味の「写らないもの」に興味が湧き、写真を主な表現手段として使い始めた。かつてあった景色や物、出来事などを想起する手立てに関心を持ち、不在や喪失をテーマに制作を行っている。
主な展覧会に、「潮騒の部屋」五条半兵衛麩 ホールKeiryu(京都、2024年)、「第11回札幌500m美術館賞入選展」500m美術館(北海道、2024年)、「すべ と しるべ 2022 #01『蛇が歩く音』」Gallery PARC(京都、2022年)、「影を刺す光-三嶽伊紗+守屋友樹」 _京都芸術センター(京都、2019年)、「きりとりめでると未然の墓標(あるいはねこ動画の時代)2019-2020」パープルームギャラリー(神奈川、2019年~2020年)など。他、第21回写真「1_WALL」奨励賞 増田玲選(2019年)、第14回写真「1_WALL」奨励賞 鷹野隆大選(2016年)。
作家の言葉
歴史ある東川賞の特別作家賞をいただいたことを嬉しく思います。
「潮騒の部屋」を作り始めたのは、2023年にイスラエルがガザに侵攻を始めてから二ヶ月ほど経つ頃でした。日々、凄惨な様子が報道されるなか、私は真っ暗にした戦争遺跡の内部で、過去の戦争や今も続く諍いのことを想像しながら作業をして過ごしていたのを思い出します。暗澹たる思いをしながらピンホール・ルームに投影される像の美しさに感動してしまった事実に、居心地の悪さを感じずにはいられませんでした。
私は複雑で切り分けられない感情のグラデーションを持っていることに改めて気づき、その情動を肯定する言葉を今も探しています。未だ暴力が終わらない時代だとしても、暗がりのなかを明るく歩くように生きたいと願いながら制作した思いは今も変わりません。私の作品が少しでも過去の戦争の記憶を想像させ、現在の争いに目を向ける機会になれば幸いです。
作家活動を支えてくれている家族や友人、知人の皆さまに深く感謝を申し上げます。
守屋 友樹

2023
ピンホール・ルーム内でフィルムに露光

2023
ピンホール・ルーム内でフィルムに露光

2023
ドローイング、グラファイト、ノート、鉄
ピンホール・ルーム内で投影される像をノートに描き写したもの

2023
ドローイング、グラファイト、ノート、鉄
ピンホール・ルーム内で投影される像をノートに描き写したもの

2024
ピンホール・ルーム内でフィルムに露光

2024
ピンホール・ルーム内でフィルムに露光