AWARDS東川賞

特別作家賞

白石ちえこ
SHIRAISHI Chieko
東京都在住

受賞理由

受賞理由:写真集『鹿渡り』(蒼穹舎、2020年)に対して

神奈川県横須賀市生まれ。旅の中で写真を撮りはじめ、これまでにマレーシア、インドネシア、タイ、インド、ネパール、パキスタンなど世界各国を旅し、2000年代より本格的に写真の世界に入る。’08年 、旅先で見つけた“町の片隅でしずかに佇む古びた建物や、ちょっととぼけたモノたち”を収めた初の写真集『サボテンとしっぽ』(冬青社刊)を出版。その後、’20~’30年代にアマチュアカメラマンの間で流行した「雑巾がけ」と呼ばれる、プリントの上に油絵の油をひきその上に絵の具で調色をしていく古典技法に魅了される。’12年に開いた個展「ペンギン島の日々」で、自身の幼少期の曖昧な記憶を映像化した、詩情溢れるモノクロプリントを発表。後に、’15年 『島影 SHIMAKAGE』(蒼穹舎刊)として、2冊目の写真集にまとめる。写真でありながら、現実離れした絵画の中のような風景が、「雑巾がけ」で表されている。近年は国内のみならず、フランス・パリでの個展「鹿渡り SHIKAWATARI」( mind’s eye gallery Adrian Bondy、’19年)や、ジョージア・トビリシで開催された「トビリシ・フォト・フェスティバル2016」など活躍の場を海外に広げている。パリで発表された「鹿渡り」は、北海道、道東でエゾシカの群れを追ったもので、’20年に写真集 『鹿渡り SHIKAWATARI』(蒼穹舎刊)としてまとめられた。雪に覆われた北海道ならではの風景の中で、柔らかな光の中に包まれた鹿と作者との静かな物語が展開されている。

作家の言葉

このたびは栄誉ある賞をいただき、心よりお礼申し上げます

写真集「鹿渡り」の始まりは、2014年冬の北海道を訪れた時からで、2020年まで毎冬、道東を旅して撮影してきました。2011年の震災以降、閉塞感が募る中で出会った冬の道東の風景でした。真っ白な静けさの中、薄明かりに照らされた凍湖を一列になって渡るエゾシカたちの姿は、私には鮮烈な出会いとなりました。動物や自然を身近に感じながらの撮影では先人たちの自然観や、北海道の生き物たちに引き継がれている記憶に想いを馳せるようになりました。私と自然とが結ばれていくような不思議な一体感が湧き上がり、震災以後に深呼吸できた気持ちになりました。

昨年、コロナ禍の不安が増す時期に、撮影してきた写真の見え方が変わってきました。そこで、どうしても今この本を作りたい、世界中が困難な状況の今だからこそ、誰かとこの光景をシェアしてみたいと強く思い、写真集の出版を決めました。 この写真集を見てくださった皆様に深く感謝いたします。

白石 ちえこ

「鹿渡り」より
根室市風蓮湖 
2018
「鹿渡り」より
別海町走古丹 
2016
「鹿渡り」より
別海町走古丹 
2017
「鹿渡り」より
根室市長節 
2016
「鹿渡り」より
根室市風蓮湖 
2015
「鹿渡り」より
根室市長節 
2018